ビバ!江戸
将軍は早起き!

将軍の朝は早く、午前6時に起きていた。これは奥泊まりと言って大奥で正妻や側室と夜を共にした翌朝も同じであった。
規則正しい生活だったようだ。


江戸の将軍(日課)



江戸将軍のタイムスケジュール ※年始・五節句・月次(つきなみ)等には本丸 表向にて大名、諸役人の謁見を受けた。

起床 寝ずの番をしていた小姓が将軍のお目覚めを「モーゥ」触れで知らせる。
朝の食事 食事中、小納戸がひげ・月代を剃り、髪を結った。食事が済み、なお髪を結いながら医師の診察が行われた。
仏間入りと
朝の総触れ
朝の洗顔後、大奥に入り将軍家先祖代々の位牌がある「御仏間」で御台所と一緒に毎朝礼拝する。
朝10時頃あらためて大奥で御台所及びお目見え以上の奥女中と朝の挨拶。
政務 昼食後、午後1頃より中奥にて政務を執った。老中から出された未決済の案件を御側御用取次が読み、それに対して決済あるいは再考の指示を与えた。
自由時間 それぞれの趣味に応じて、弓槍剣術の稽古、奥儒者の講釈の聴講、馬場で乗馬。綱吉は書・絵画・読書・朱子学、吉宗は鷹狩り、家斉は謡曲、慶喜は釣り。夜は読書や小姓相手に将棋・囲碁・投扇興などで過ごした。
入浴

風呂場は床の間付きの脱衣所用の部屋、楕円形の風呂桶のある部屋、洗い場の部屋の3部屋(それぞれ8畳)。衣服は小姓がすべて脱がせ、小納戸が全身をぬか袋で洗った。お湯は他で沸かしたものを湯桶で運び入れた。

トイレ 大・小とも京間で2畳の広さ。小:置樋箱(白木造りの高さ三尺、一尺五寸、長さ二尺五寸)上部の開いた穴にする。その都度中身は掃除する。大:黒漆塗りの引き出し付きの箱にする。中には紙か籾殻が入れてある。やはりその都度中身は取り替える。
奥泊り 昼の内に御年寄にその名を告げておく。準備が必要なためいきなりはだめ。また、精進日(歴代将軍の命日や東照宮に参拝する前日)は不可。

将軍の食事…朝食例(12代家慶の場合)中奥で一人で
一の膳 汁、飯  
向うづけ さしみ、酢の物などの生もの類
平(ひら) 煮物
二の膳 吸い物  
焼き物…きすの塩焼きと漬焼きにしたもの。きす両様という。
朔日・15日・28日は鯛、比目魚(ひらめ)

将軍の食事…昼食例(12代家慶の場合)大奥で御台所と
一の膳 蜆(しじみ)
平(ひら) こちの切身、長芋、紫蕨(ぜんまい)
置合 寒天、栗、または慈姑(くわい)のきんとん、ぎせい豆腐、金糸昆布
焼物
お外のもの 海老
お壺 蒸し玉子等
二の膳 鯉こく
鯛の刺身
置合 蒲鉾、切身、ようかん、玉子焼、鴨、雁等
焼物 鱚(きす)
お外のもの 鮑(あわび)
お壺 からすみ等
『江戸のファーストフード』大久保洋子著 講談社 参照

将軍の食事(用いなかった食材)
野菜類 ネギ、ニラ、らっきょう、つく芋、藤豆(いんげん)、さやえんどう
海藻 わかめ、ひじき、荒布(あらめ)
魚類 このしろ、秋刀魚、鰯、鮪(まぐろ)、鮫、ふぐ、ナマズ、どじょう、鮒(ふな)、むつ、干物類
貝類 牡蠣、浅蜊(あさり)、赤貝
肉類 (鶴、雁、鴨、うさぎ)以外のすべて
水菓子 水瓜(すいか)、瓜、桃、りんご、すもも ※梨、柿、蜜柑はよい
※将軍により好みもありこの限りではない。

◆奇妙なしきたり◆
 用があり将軍に謁見する場合、中奥の御座之間の前にて着座平伏すれば、将軍「それへ」とお言葉がある。〈近くそれへ進み出よ〉と言う意味である。しかし、いわれた当人は身を起こし、膝行しようとするがその場でただ膝を左右うごめかし、前に進もうとしても将軍の威光にうたれ、前に進めないといったことを古来からの慣例としていた。
 時は幕末、勝海舟が御前に召された時、「それへ」のお言葉を拝し、起って進み出ようとした。驚いた大目付および御側御用人が「シッ、シッ」とこれを制止し、用が済んだ後別室に呼び出しこの行為を責めた。これに対し海舟がいうには、将軍より「それへ」のお言葉があり、進み出て国家の御大事を申し上げるのに制止されるのは如何なものか。この国難に際し、そのような旧態依然とした慣例を守り続けているのは徳川幕府のためにも、深くこれを悲しむと。これよりその慣例は廃止された。


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将軍
征夷大将軍の略
建久三年(1192)に源頼朝が任ぜられて鎌倉幕府を開いて以後は武家の統率者の称号となり、幕府の代々の首長が朝廷から将軍宣下を受ける形式をとった。


江戸城本丸
表(おもて)
政事・公式儀式を行う
中奥(なかおく)
将軍の日常居住空間
大奥(おおおく)
将軍の夫人・側室の住まい。
五節句
七草(1月7日)上巳(3月3日)端午(5月5日)七夕(7月7日)重陽(9月9日)
月次:毎月1・15・28日
「もう」
将軍の起床時や食事の御所望時にこの合図で他のものに知らせた。
月代(さかやき)
額から頭の中央にかけて半月形にそり落としたもの。成人のしるし。
小姓(こしょう)
小納戸(こなんど)
上記2役が将軍のそばに仕えて日常の雑用等をつかさどった。
小姓は表と中奥に分かれている。


将軍が食べる米は
美濃米を精米して、毎日、4〜5人が黒漆の盆の上で大きく質の良いものを一粒ずつ選んだと言われている。









ぎせい豆腐
ぎせい豆腐
水切りした豆腐に野菜や卵などを加えて調味し、厚焼き卵のように焼いた料理。広辞苑より
 

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